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【台中日本語教師勉強会】第86回の報告(教室のセクシャルマイノリティー)

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【台中日本語教師勉強会】第86回の報告(教室のセクシャルマイノリティー)

*以下は台湾のブログサービス・樂多(http://roodo.com)に掲載していたものですが、サービス終了のため、こちらに移行しました。

 

今日の勉強会、13名の方が集まってくださいました。
暑い中、わざわざ来てくださったみなさん、本当にありがとうございます。
(台北、桃園から来てくださった方も!)
 

今日のテーマは教室の中のセクシャルマイノリティー。

「性と生を考える会」と奈良教職員組合が製作した冊子「教職員のためのセクシュアルマイノリティサポートブック」をもとに、参加者で話し合いました。(*勉強会当時は前のバージョンでしたが、現在(2019年6月時点)ではバージョン4になっています。)

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司会は大西さんと小原さん。
お二人から提示された話し合いの方向性は以下の2つ。

  1. 教室の中に必ず存在するセクシャルマイノリティーの学習者が安心して受けられる授業、教室活動を考えたい。
  2. セクシャルマイノリティーの存在を考慮に入れられる教師を一人でも増やしたい。

そして、上記の冊子を参考にしながら、LGBTとは何かを確認し、教室で我々教師が気をつけなければならない点について意見交換しました。

以下に参加者の方々に書いていただいた感想を載せています。(感想は送っていただき次第、追加します。)

* *

《参加者の方々の感想》

■ 高さんの感想
本日勉強会に参加させて頂き、誠にありがとうございます。大勢の前でお話しするのは久々ですので、緊張しておりましたが、皆様のご意見、ご経験を拝聴できて、勉強になりました。

 

本日の勉強会には、年齢や職業、婚姻状況などプライベートな質問は学生さんのプライバシー侵害になりうるというご意見がありました。恥ずかしいながらも、このことについては一度も考えたことがなかったので、すごく勉強になりました。

昔学生として勉強していた時のことを思い出しましたが、プライベートな質問はよくありました。年齢や職業、家族の構成、結婚願望、最近の特別な出来事、理想的な交際相手などがありました、聞かれても何も不快感はありませんでした。むしろ実用的な会話練習ができて、先生とクラスメートとの距離も縮められてよかったと、感謝の気持ちでした。ですが、本日の勉強会でプライベートな質問に不快感を感じる方もいらっしゃるということに気付き、大きな収穫になりました。

しかし、授業で避けられたとしても、就活や留学、交流会などなど、教室以外のいろいろな場面で聞かれる可能性があります。個人的な意見ですが、強制的ではないので、うそでもいいので、を前提にすれば、やはり練習する価値があるのではないかと思います。これからは、強制的ではないことを先に伝えた上で、プライバシー侵害を感じさせないように配慮しながら会話練習をしてもらいたいと思います。

また、本日の勉強会後いくつか疑問に思ったことがあります。またいつかのご機会で皆さまのご意見をお伺いできればと思います。

● LGBTであるかどうかは自分の選択ではない、自分で選択できないという内容が本日の勉強会にありましたが、もし生まれつきではなく、当事者に告白してもらった後にLGBTの方を好きになった場合も受け入れて宜しいでしょうか。誰かを傷つけなければ、性別はどうであれ、誰にでも魅力を感じた人と付き合う権利があると思っておりますが、皆さまはどんなお考えでしょうか。

● セクシュアル・マイノリティについてまだ賛否両論があるというのが現状ですが、授業中で当事者へのサポートを示したことによって、異性愛の学生から異論や反発が出た場合、どう対応したらよいのでしょうか。

●先生は授業中で当事者への受け入れを示し、カミングアウトしやすい環境を作るべき存在ですが、団体クラスは不特定多数ですので、さりげなく世間話で触れる可能性が高いでしょうけれど、マンツ―マンの授業ですと、当事者である可能性のある学生さんにLGBTへのサポートを示したら、結局自分の推測と違った場合、先生に勝手にLGBTって思い込まれたと、逆に学生を傷つけてしまうことになるでしょうか。LGBTの方は異性愛者だと勝手に思い込まれたくないように、異性愛の方も同性愛者だと勝手に思い込まれたくないだろうと思いました。マンツーマンの授業の環境づくり、どうしたほうがいいでしょうか。

以上が本日の感想でした。
本日一緒に勉強させて頂き、ありがとうございました。

□ この高さんからの最後の問いかけに対する小原さんからのコメント
「カミングアウトしやすい環境」というよりは「LGBTの学生も安心して参加できる授業」を作るべきだと思います。
それは
・教師が差別的な言動を行わない。
・当事者ではない学生が差別的な言動があったときにそれに加担せず、その場でしっかりと反対を表明する。
カミングアウトは教師が促すべき行為ではなく、あくまで学生の自主性に任せるべきであって、また教師が学生のセクシャリティーを推測する必要もありません。(小原さん)

■ 匿名 さん
今回の勉強会で、授業法の勉強ではなくて、性別平等についてお伺いました。
そうですね。どうやって日本語の学習者に安心して授業に来てもらえますか?
「セクシュアルマイノリティ」だけじゃなく、「授業に来る学習者が触れたくない話題」でもあるので、授業先生が授業の現場でそれらを意識しながら、居心地がいい勉強の環境を心かけるようにしましょう。

■ 大西さんの感想
自分では決められないこと、それに対して第三者が自身の価値観で判断を下すことの愚かさを改めて感じました。教師として、親として、安心できる環境を作り出すことの大切さが身に染みます。皆さん本日はお集まりいただきありがとうございました。


■ 金戸幸子 さんの感想
本日のテーマは非常に重要なテーマだったと思います。
勉強会の場では、教師が自分からカミングアウトしたことで逆に生徒やその親に引かれてしまう事例なども紹介されました。
教える側にも生徒(やその親・家族)の側にもまだ共通認識が定着しているとは言い難く、それだけに難しいテーマですが、
私も、普段使用するテキストや例文、また生徒と接する場面などにおいて、これまでの性に対する「常識」を少しずつでも
変えていくような心がけを持ち、必要に応じて実践していきたいと思います。

■ 林三豊 さん
現在、LGBTについて授業に取り入れたことがあるという教員は実際に少ないということです。
無意識に当事者に傷をつけたりすることもあると思います。
今後、当事者が安心で居心地のよい場所やゆったり安らげる雰囲気を作るのは我々教師として重視すべき課題だと感じております。
今日は先生皆様のご意見をお聞きすることができて大変勉強になりました。本当にありがとうがざいます。


■ 犬山の授業
『みんなの日本語改訂版』22課に以下の文を含む短い対話練習があります。

(練習C−3)

例)どんな仕事をしたいですか
1)どんな会社で働きたいですか
2)どんな人と結婚したいですか

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上記2)の対話例(教科書に載っているもの)
A おめでとうございます(成人式という設定)
B ありがとうございます。
A どんな人と結婚したいですか。
B そうですね。友達が多くて、ユーモアがある人と結婚したいです。

これをペアワークで行う際、以下の3つを追加しました。

3)どんな会社を作りたいですか
4)どんな人といっしょに生活したいですか
5)どんな所に住みたいですか

まず、トピックを増やすのは、話したくないトピックについては話さなくてもよいように。5つの中から、2つくらい話してもらえればよい、と。

また、「結婚」については、
教師からのコメントとして「今は、結婚を考えない人もいますから、この質問には答えなくてもいいですよ」「でも、結婚しない人も、友達や恋人といっしょに生活することはありますよね。その時、いっしょに生活する人はどんな人がいいですか」と4)で答えるように促す。その際、特に男性とか女性などの性別については触れない。


 

毎回参加費の代わりに「台中育嬰院」に送る寄付を募っています。この日集まった募金は2000元になりました。
みなさんのご協力、感謝いたします。
「台中育嬰院」

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犬山俊之
犬山日語教室
403台中市西區中美街630號(Taiwan)
電話: 0423262959
e-mail: inuyama360@gmail.com
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