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【台中日本語教師勉強会】第26回〈研習會〉の報告(使役受身)

· 勉強会
*当初この記事を掲載していた樂多(http://roodo.com)ブログが2019年にサービス終了となったため、こちらへ移動させました。(2019年11月)
 
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今回のテーマは使役受身。

この暑さの中、19名の方が来てくださいました(台南や彰化からも!)。みなさん、本当にありがとうございました。参加してくださった方の感想などもお待ちしております。このブログのコメント欄にお願いします。

以下、当日の内容の簡単なまとめです

 

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テーマは使役受身で、ポイントは二つ。
A なぜ変化形が二種類あるのか。例)「行かされる」「行かせられる」
B なぜ使役受身という変化形が必要なのか(それをどうやって学習者に説明するか)。

 

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A 変化形について
授業での説明例
写真のような活用表を用い、「聞く」から使役「聞かせる」への変化を確認したのち、「聞かせる」が2グループ動詞(一段活用)の変化をすることを説明する。「聞かせる(使役)」に「られる(受身)」がついて、「聞かせられる(使役受身)」になる、と。

 

それから、追加で「聞かせる」以外にも、使役の意味を表す形として「聞かす」もあることを説明。この「聞かす」は1グループ動詞(五段活用)の変化をし、「聞かされる」となる。
表に自分で書き込んでみることで、変化の理屈を把握できるのではないか。

 

*この「聞かす」については、文語形であるとか、西日本の方言であるなどの説がある(→『日本語のシンタクスと意味1』P.285)が、教室では特に詳しい説明はしない。

 

*この2つの形についての未確認情報を一つ。30年ほど前の日本の中学国語教師用の指導書(?)の中に「聞かされる」は活用の規則から外れるため、教室では「聞かせられる」を使うように指導する、というような記述があったという話を聞いたことがありますが、現時点では出典不明です。元中学国語教師だった自分の父親から聞いたのですが、父の勘違いかもしれません。次回帰国時に父の本棚を調べてみようと思っています。

 

*犬山の考え:「聞かせられる」の形が「使役の可能」と「使役の受身」の二つの意味を兼ねている(上記の活用表を参照)ことから、違いをはっきりさせるために、使役受身には「聞かされる」が使われているのではないかと思います。

 

 

 

B どうして「使役受身」が必要なのか
日本語の使役の用法が広すぎるため、場合によっては誤解を招くおそれがあるから。使役の意味を限定するために。
使役の基本的な「意味」は人の行為をコントロールすると定義できると思うが、その際、三つの用法に分類できる。

 

1 強制
先生は学生を立たせた。

 

2 許可・放置
お母さんは子供を公園で遊ばせた。

 

3 手伝う
お母さんは赤ちゃんにミルクを飲ませた。

 

例えば、
「お母さんは子供にズボンをはかせた」という文があった場合、これが「強制」なのか「許可」なのか、はたまた「手伝う」なのか、この一文からでは判別できない。

また、「父はわたしを留学させた」にしても、父がわたしをコントロールしていることはわかるが、それが「わたしの意」に沿ったものなのか、意に反したものなのか、ということがわからない。

 

それで、「意に沿った」ということを明確にするためには、「てくれる」「てもらう」などの補助動詞をつけ、話者の感謝の気持ちを添えた表現が用いられる。
一方、「意に反して」、つまり強制的なということを示すためには、受身「られる」がつき、話者にはコントロールできず、その結果迷惑をこうむるという意味で、使役受身の形が用いられる。

 

お母さんは子供にズボンをはかせた。
→子供はお母さんにズボンをはかせてもらった。(手伝う→受益+感謝)
→子供はお母さんにズボンをはかされた。(強制→コントロール不能+迷惑)

 

父はわたしを留学させた。
→わたしは父に留学させてもらった。(許可、手伝う→受益+感謝)
→わたしは父に留学させられた。(強制→コントロール不能+迷惑)

 

以上のように、「使役受身」形を用いることで、広い使役の意味(三種)の中から一つに限定できることになる。

(犬山)