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【台中日本語教師勉強会】第78回の報告「〜おく」「〜てください」等(『大家的日本語』第二版)

· 勉強会,報告

*この記事は当初台湾のブログサービス・樂多(http://roodo.com)に書いていたものですが、サービス終了のため、こちらに移したものです。(2021年2月2日)

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第72回勉強会の報告

 蒸し暑い天気の中、今回も20名を超える参加者のみなさんが集まってくださいました(台北や新竹、彰化からいらした方も!)。
本当にありがとうございます!

今日は、上林さんが『大家的日本語』改訂版についての解説をしてくださり、続いて上林さんの14課の「〜てください」の練習方法のデモ、最後に少し犬山が30課の「〜ておく」について話しました。

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ここには「〜ておく」についての犬山の考え方を短くまとめ、その後にみなさんい書いていただいた参加者の方の感想を載せておきます。

《「〜ておく」の意味機能について犬山からの提案》

「ておく」についての教科書の説明方法 (「準備」「措置」「放置」)はわかりにくい。「保持」という一言でまとめるのはどうか。

教科書の分類(『みんなの日本語』):「準備」「措置」「放置」

準備:何らかの目的に向けて準備的な行為を表す
措置:事態の収束を図る、集結させるための行為
放置:そのままにする
  ↓

問題点1: この説明方法を採用する場合、以下の2つの文の違いをどう説明するか。

1 準備します。
2 準備しておきます。

3 ごはんを食べます。
4 ごはんを食べています。

同じ補助動詞を使った文、3と4の違いは、初級の学習者にも説明できると思いますが、1と2の違いを簡潔に説明することができるでしょうか。(実は学習者からも、他の先生からも何度も聞かれたことがある問題です。)

問題点2: この説明方法を採用する場合、以下の場面はどう説明するのか。

Aさんは教室の中にいる。
Bさんが教室に入ってきた。
AさんがBさんに

A: あ、そのドア、開けといて。

準備なのか、放置なのか、それとも、どれでもよいのか。

犬山の疑問点:「準備」「措置」「放置」という言葉は、「ておく」の意味機能というより、「ておく」の発話場面を説明する言葉ではないのか。

つまり、何らかの「準備」について話す場面で「ておく」はよく使われるのであって、「準備」という語では「ておく」の機能が説明できていない。

犬山は従来の「三用法」とされるものをまとめる「機能として、「保持」という言葉を提案する。
用法は二つ。

1 何もしないで、現状を保持。
現状: ドアが開けてあります。
A: ドアを閉めましょうか。
B: 開けておいてください。

2 ある動作をして、その結果の状態を保持。
旅行の前に荷物をまとめておきます。
食事が終わったら、テーブルを片づけておきます。
(*ある基準時点の「前」であれば、「準備」、「後」であれば「措置」とも言えるが、共通点としては「状態の保持」がある)


この「保持」という語を使えば、上述の「問題点1」の1と2の違いも簡潔に説明できるのではないか。
1 準備します。
2 準備しておきます。

つまり、2は「準備したあとで、その状態を保持する」と言えばよい。

「問題点2」も、「準備」とか「放置」とかは、二次的な問題で、「ておく」の機能としては「ドアを開けた状態を保持する」と説明できる。

以上。(犬山)

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【参考】

【日本語教師向け】『みんなの日本語』授業で使える小ネタ集

https://www.blog3.inuyamatw.com/blog/koneta1

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《参加者の感想》

■ M.K. さん
首先謝謝上林先生將大家的日本語初級進階版的增添削減語彙作出完整的比較。雖然改訂版的出版頗獲期待、但是經各位在座的老師比較、發現還是有不是完美之事。
犬山老師真不愧是文法解說的專家、將30課的文型再以精闢的解說,加上一貫的身體語言,學習者應該更加了解。每次的“勉強會”都學到很多。謝謝上林先生、犬山先生。

■ 匿名 さん
雖然知道「大家的日本語」已出改訂版 ,但至今仍無機會比較與舊版有何差異 。感謝上林先生提供這個機會 ,列出單字 , 文法 ,會話更改部分並詳加解釋 說明增減原因。 示範教學的練習也很生活化 ,感覺學生下課後就會用來跟日本人對話 。犬山先生「~ておく」的說明簡單易懂 。還能聽到其他老師的想法及意見 ,受益良多 。有機會希望還能再次參加 ,謝謝 。


■ 匿名 さん
「〜ておきました」「〜てあります」的不同。山田老師以動作結束和狀態來說明、簡易明暸清楚。非常感謝。


■ 荒木 さん
本日はどうもありがとうございました。「〜てください」の「勧め」の用法の導入・練習について、盛り上がる教室活動を紹介して頂いて、とても参考になりました。実際に自分が学習者として、「勧め」の用法を導入された場合、どんなところに疑問を持つのかなど考える良いきっかけになりました。
また「〜ておく」の3つの用法については学習者に提示するキーワードと、教師が頭に入れておけばいいだけのキーワードと、しっかり分けて教えなければならないと改めて感じました。ありがとうございました。


■ 匿名 さん
日本語を教え始めたばかりなので、他の先生方がどのようなことを考えて教えていらっしゃるのかを知ることができて楽しかったです。『みんなの日本語』を使っていて、違和感を感じる単語や場面があったのですが、教科書にのっていない内容をどの程度教えるか迷っていました。実際に日本人が普段使う言葉を積極的に教えられている方も多いようなので、私も参考にさせていただきます。
14課も30課もまだ教えたことがなかったのですが、既存の解説書の説明に捉われず、よりわかりやすい解釈を考えたいと思いました。とても参考になりました。

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■ 匿名さん
旧版と改訂版の違う部分をはっきりとフォームで示してくれてたり、変更した理由を説明してくれたりして、ありがとうございました。


■ 匿名 さん
旧版と新版を比較したことはありましたが、一人で比較するよりも、発見が多く、参考になりました。
場面を設定して練習を作りあげることは容易ではないなと感じましたが、様々な意見が聞けてよかったです。練習Aの文法の分け方を参考にして教えていますが、Aにしても検討すべきだということがわかりました。


■ 匿名 さん
勉強になりました。ありがとうございます。指示、依頼、勧めの違いについて、わかりやすく説明していらっしゃったと思います。


■ 匿名 さん
今はまだ旧版を使って教えているので、新版を使ったことがないのですが、今後のために今日いろいろと学べてとてもよかったです。
細かく文型を検討していくと、もっと考えなければならないところがあると思うので、2回目、3回目を楽しみにしています。それまで独自で研究していこうと思います。


■ 匿名 さん
上林先生、犬山先生
今日はありがとうございました。14課 「Vてください」が持つ意味、「指示」「依頼」「勧め」がわかりやすく、且つ面白く説明されていて、参考にしながら、とても楽しめました。
また、30課の「Vておく」が「保持」という言葉一つで表せることに驚きました。毎回わかりやすい説明で、学生さんもすぐ理解できるのではと思います。また参考にさせて頂きます。


■ 匿名 さん
「ておく」の説明方法が難しいと思いました。日本人の私ですら頭が「???」となるのに、学生にわかりやすく説明できるかな……と不安になりました。まだ教えていたにところなので、この提案を事前に聞けてよかったです。今日の勉強会の内容は難しかったですが、とても勉強になりました。(学生さんから聞かれたことのある質問、疑問を聞けてよかった。「てあります」と「ておきます」の違いなど。)


■ 匿名 さん
「て形+ください」の説明が三つになったことについて、「こう使います」とだけ説明することはできても、それを会話に混ぜて使う練習を考えるのは難しいなと思いました。
中国語での説明は難しくても、台湾語だと説明できるというのはおもしろいなと思いました。ありがとうございました。


■ 匿名 さん
「〜てください」の勧めの意味の練習で「ぜひ」を扱うかどうかの話では、私は扱った方がいいなと思いました。単純に、日常会話で「どうぞ」よりも「ぜひ」の方が使うと思うので、みなさんが話されていたように深く考えられませんが、できるだけ日常会話で使うものを取り扱いたいなと思いました。とても勉強になりました。
ありがとうございました。


■ 匿名 さん
新版の文法項目が変わったことは知っていたのですが、単語もかなり変わっていたのは初めて知りました。変更点に注目することで教師側で提出する文法項目も調整したほうがいい場合があることを知りました。台湾の方とも議論できる環境はとてもすばらしいと思います。


■ 後藤知寿子 さん
今回も参加させていただいて、ありがとうございました。
「〜てください」は、今まで「指示」「依頼」「勧め」として説明していただけで、
「私のため」「あなたのため」という観点で文型を捉えていなかったのに
気づかされました。自分はまだまだ文型分析が甘いなとつくづく実感しました。
「〜ておく」はズバリ犬山先生のおっしゃっていた「保持」で、わかりやすく説明できそうで、
とても勉強になりました。また、「準備しておきます」「準備します」も、明確に説明を
いただけたのが良かったです。
どうもありがとうございました。
また、どうぞよろしくお願いいたします。


■ 林三豊 さん
今回、上林先生が「〜てください」について、「指示」、「依頼」と「勧め」三つの使い方を短い会話に導入する方法はかなりわかりやすく、覚えやすい勉強法だと思っていました。
その上、犬山先生が「〜ておく」この「準備」「措置」「放置」の意味を一つ「保持」の言葉にまとめられ、学習者にとって本来ややこしい文法は負担がかからないようになると実感しました。
今日は大変勉強になって、お二人の先生、どうもありがとうがざいました。